医療費の増大
2000年から2020年にかけて医療費は30.1兆円から46.6兆円に増大しています。
その要因として、下記のとおりいくつか挙げられます。
〇 高齢化
〇 悪性新生物(がん)の増加
〇 医療の高度化・高額化の進展(バイオ医薬品の開発など)
薬剤費は医療費全体の約20%を占めると言われ、約10兆円の市場になります。
ちなみに医師等の人件費はほぼ半分の約22兆円、医療材料や光熱費等で約15兆円の内訳になります。
人件費は削りにくい・・となると薬剤費(つまり薬価)を引き下げるほうが簡単ですよね。
国としても、薬価の引き下げに必死です。
✓ 長期収載品の引き下げ(古い薬は下げるよ!)
✓ 市場拡大再算定(売れすぎたら下げるよ!)
など、業界の中にいる身としては理不尽に思えるルールで薬価が下がっていきます。
実際に2022年4月薬価改定では薬剤費ベースで6.69%の引き下げでした(約6000億円・・)。
ただし、ムチだけではなくアメもあります。
新薬創出加算は新規性や画期的な新薬に対し、薬価を一定期間維持してもらえる制度です。
そのため新薬をしっかり創出できる会社は生き残ることができますが、開発するには莫大な開発費がかかります。
医薬品の開発費と確率
新薬と後発品では開発期間、費用などの流れが異なるため、今回は「新薬」における開発の流れと費用をお話しします。
医薬品は、次のような段階を経て開発されますが、9~17年もの年月がかかることが一般的です。
(1)基礎研究(2~3年)
(2)非臨床試験(3~5年)
(3)臨床試験(3~7年)
(4)承認申請と審査(1~2年)
また、1つの成分の開発に数百億~数千億円規模の費用が必要と言われております。
世界の売上上位企業である製薬企業の開発費を一部ご紹介します。
会社名 開発費/前年比
1位 ロシュ(スイス) 139億2000万ドル/1.8%増
2位 メルク(米国) 135億5800万ドル/37.3%増
3位 ブリストル(米国) 111億4300万ドル/81.2%増
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17位 武田薬品工業(日本)41億200万ドル/7.4%減
19位 アステラス(日本) 20億2100万ドル/0.1%増
20位 大塚製薬(日本) 19億5100万ドル/0.5%増
世界売上トップ10である武田薬品工業でも開発費としてはロシュの1/3程度になります。
また、武田薬品は有力と思われた開発品が中止になるなど苦しい状況が続いています。
MRとして働いていると、フェーズⅢ(最終段階の治験)までたどり着いてようやく希望が持てるかな?という印象です。
それでも、開発に失敗することはざらにあり、専門部隊を立ち上げたがすぐに解散したという話はあるあるです。
また、国内で定期的に医薬品を上市できているのはほんの一握りの企業であり、莫大な開発費を投じている外資企業が大半を占めます。
これだけの年月と費用をかけて上市した医薬品を適正に使用してもらうための情報提供を行う者がMR(Medical Representatives)になります。